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本校の理念

1.産業翻訳、技術翻訳とは

 翻訳の仕事は、その内容から分類すると、大雑把にいって「文芸翻訳」、「産業翻訳」に分かれます。文芸翻訳は出版翻訳ともいわれ、基本的に外国で出版された書籍を日本語に翻訳して出版することを前提としたものをいいます。これに対して、産業翻訳とは主としてビジネスで必要とされる文書、文献を翻訳するもので、なかでも特許を代表とする技術文書の翻訳を技術翻訳といいます。

2.英語の産業翻訳件数は約9割

 技術翻訳のほとんどは英語の案件であり、その内容は多岐にわたり、案件数も膨大にあります。そこで、技術翻訳者を目指す英語学習者は、なんだかんだいっても英語の基礎文法を大学受験等で習得していることから、その後の方法論を間違えなければ英語以外の言語の場合よりも比較的早く収入化が実現できる職業だと言えます。

3.技術翻訳で必要とされるもの

 これまでも、多くの人たちが翻訳学校や通信教育で技術翻訳に関する講座を受講しています。それにもかかわらず、知り合いの翻訳会社にきくと、どこもよい翻訳者が慢性的に足りないといいます。他方、巷では「技術翻訳家になれない」、「技術翻訳の仕事がない」と耳にすることが実に多いのです。

 私は翻訳会社からクライアントからクレームのついた翻訳文書の校閲の仕事をよく頼まれるのですが、このような人たちの訳文を見てみると、次のような共通する問題点があることがわかりました。

   

A) 理系出身者の翻訳者の場合、原文に書かれた技術内容を理解はしているものの、原文の文法面の分析が甘いために、内容を独りよがりに理解し「フィーリング」で翻訳するため、とんでもない誤訳が起こる。

   

B) 文系出身者の翻訳者の場合、原文の文章解析はよくできているのに、その技術内容をよく理解できないため、誤訳が起きたり、専門家のクライアントが読んだとき、不自然な訳語や語法が頻出する。

   

C) 外国語学習歴のなかで、直接教授法のような会話を重視した勉強ばかりしてきた人は、きちんとした文章体の日本語を記述する能力に欠ける。逆に、和訳ばかり勉強してきた人は論理的な英文を書けない(特許翻訳では、英訳の仕事の占める割合がとても高く、これこそ収入面から見ればドル箱なのです)。一方、作文力がない人は、和訳でも誤訳が起きやすい、と専門家は口をそろえて言います。私もまったく同感です。


 そこで、技術翻訳では、(1)原文言語の文法に基づいて正確に文章解析を行い、(2)まずいったん原文の内容を論理的に直訳し、(3)そのうえで、その分野に特有の文体、語法、語彙を的確に選定しながら、訳出する言語として自然でこなれた文章にする必要があるわけです。

4.技術翻訳者になるための学習法

 技術翻訳者を目指している学習者は多くいます。それぞれの方の学歴や職歴はさまざまですので、人によって新たに習得すべきスキルは異なるはずです。従って、各学習者は自分の能力で欠けている部分をはっきり自覚して、学習をもっとも効率的な形で行うべきでしょう。そのためには、各学習者が補強しなければならない点を明らかにして、学習者ごとにカスタマイズされた指導をしてもらえるような講座が必要でしょう。

5.分野選択について

 よく、文系出身者から、「技術翻訳をする上で特定の分野に絞る必要があるか」と質問されます。ほとんどの理系出身者には技術者や研究者といった経歴があるので、文系出身者は「自分は理系のことは不得手なのだが、大丈夫だろうか」と不安をもつのでしょう。 さて、この質問の答えは、「No」です。技術翻訳者になろうとする出発点での段階では、技術者や研究者並みに特定の分野の知識を習得することはもちろん困難でしょうが、理系の人もすべての理系分野に詳しいわけではありません。むしろ、自分の専門分野を一歩離れたら(比較的関連性の強い分野であれば文系の人よりはものを知っているでしょうが)、文系の人と五十歩百歩とすら言えると思います。

 むしろ、経験上、分野を敢えて絞らないで、多分野の文献を翻訳できるようになることは可能です。実際、私の場合、IT、医薬、材料化学、半導体、機械など実にさまざまな分野を翻訳しています。理系、文系というよりも、情報の調査能力や、少しでも翻訳を正確に仕上げようとする努力というか良心(仕事に対するプライド、責任感と言ったほうがよいかもしれません)を持つことのほうが重要に思います。

 実際、インターネットが普及した現在、翻訳作業の方法論は20年前とはまったく変わりました。依頼を受けた文書の翻訳に必要な情報のほとんどは上手にインターネットを利用することによって入手することができます。 文系出身者でも理系出身者でも、インターネットならば、平等にアクセスして情報を得ることができます。学歴や職歴によって特に売りにする分野がなければ、逆にどの分野でも翻訳できるということを売りにすることは十分に可能なのです。結局、この業界で成功する鍵を握るのは、飽くなき追求心、世の中のどんな現象にも興味をもち、必要とあればいつでも進んで勉強しようとする謙虚な態度であると私は思います。

6.ビジネスパートナーを獲得する夢

 先にも書きましたが、私の付き合いのある翻訳会社はたいてい「常に優秀な翻訳者を求めている」と言います。でも、見ていると、このような会社は、自ら人材を養成しているのではなく(そういう余裕もないのでしょうが)、自分で努力して優秀な翻訳者になった人を何の苦労しないで自分のスタッフに加えたいと思っているのです。しかし、どこも優秀な翻訳者は奪い合いなので、その激烈な競争のなかでなかなか翻訳者を獲得できず、常にコマ不足で綱渡りをしているのです。一方で、こういう会社に限って、翻訳者のクオリティを社内で評価する力がなく、クライアントの理不尽なクレームにも一喜一憂したりするのです。

 優秀な技術翻訳者をその場しのぎに利用するのではなく、よきビジネスパートナーとなりうる人材を養成する努力を積み重ねることによって、長期にわたって高品質な翻訳商品を提供できる翻訳会社を誕生させることを私は夢みています。

Valente翻訳スクール代表
加藤 真美